Claude Opus 4.8は司令塔になれるか FableとOpusの差を実測
使い慣れたモデルが使えなくなるかもしれない。その下見として、司令塔だけを替えて差を実測しました。
前回: 融合は単体を超えるか — 2つの成果物を混ぜた「Mix」の実力
前回までに分かったのは、司令塔とワーカーの組み合わせで結果が変わる、ということでした。
今回良かったのは Fable 司令塔レーンの Codex ワーカー、次いで Codex 司令塔レーン。
では——司令塔そのものを別のモデルに替えたら、何がどう変わるのでしょうか。
私たちMIFは、Claude Code のもう一つのモデル Opus 4.8 を司令塔に迎え、Fable 5 主導のレーンと同じ課題を任せて、差を実測しました。
先に断っておくと、これは「Opus が優位かどうか」を証明する実験ではありません。
同じ課題・同じワーカー構成で司令塔だけを替えると、成果物・時間・運用の姿がどう変わるかを観測する実験です。
本記事は1つの課題・各レーン1回の観測(n=1)であり、モデル一般の優劣を示すものではありません。レーン間で指示条件が完全には同一でない部分があり、本文中で開示します。
なぜ Opus なのか — Fable が使えなくなるかもしれなかった
そもそもなぜ Opus を試したのか。
理由は切実です。
ここまでの実験で最良の成果物を引き出してきた Fable 5 が、定額プランの対象から外れる可能性が報じられていたからです。
実験当時は「7月19日以降は使えなくなるかもしれない」という状況でした。
もしそうなったら、私は司令塔を何に替えればいいのか。
その有力候補が、同じ Claude Code のまま使える Opus 4.8 でした。
つまりこの回は好奇心の実験ではなく、乗り換え先の下見です。
定額プラン除外の正確な適用日・条件は変わる可能性があります。本記事の記載に関わらず、必ず公式情報で最新の提供条件を確認してください。
その後の続報: 本連載の実験を行った時点では先行きが不明でしたが、Anthropic の公式ヘルプセンターの説明によれば、2026年7月20日以降、Fable 5 は Max プランおよび Team のプレミアム席ではプランに含まれ、週次の利用上限の最大50%までを追加費用なしで Fable 5 に充てられる形になりました(加算ではなく、他モデルの利用も同じ上限を共有します)。一方 Pro プランや Team の標準席では従量課金のクレジット扱いです。また Fable 5 は他モデルより上限の消費が速いとされています。つまり「Fable がまったく使えなくなる」という前提は、プランによっては外れたことになります。本記事の実験は、この結論が出る前の状況判断のもとで行われたものです。提供条件は変わり得るため、最新の条件は必ず公式情報で確認してください(2026年7月20日時点)。
さらに続報: 本記事の公開直前、2026年7月24日に Anthropic は Opus 4.8 の後継となる「Claude Opus 5」を発表しました。公式発表によれば、Fable 5 に迫る性能を約半額の料金で提供するとされています。本記事の実験と数値はすべて Opus 4.8 によるものです。いま乗り換え先を検討する場合は、最新のモデル構成と提供条件を必ず公式情報で確認してください(2026年7月27日時点)。
もう一つ、背中を押した出来事があります。
Anthropic の公式サポート記事の説明によれば、Fable には安全機構(safeguards)があり、特定の内容ではターンの途中でも自動的に Opus 4.8 へ切り替わる仕様とされています(2026年7月確認時点)。
Round 3 の成果物を新規の Fable セッションにレビューさせていたところ、まさにこれが起き、ターンの途中からモデルが自動的に Opus 4.8 へ切り替わっていたのです。
私たちの fail-closed 検証器(モデルの完全一致を要求する仕組み)がこれを検出し、そのレビューは無効にしました。
安全機構は仕様どおりに働き、検証器も設計どおりに機能した——それ自体は良いニュースですが、期せずして「Opus が Fable の代わりを務める」予告編にもなっていました。
意図せず登場した Opus を、今度は正式に司令塔として招く。
下見の舞台は整いました。
ステップ1: まず融合工程だけを替えてみた
最初の比較は小さく始めました。
完成済みの2つの候補・同じ評価要約・同じ融合指示を Fable と Opus に渡し、融合の采配だけを比べる controlled replay です。
結果は Opus 融合版 63.63点、Fable 融合版 47.84点。
差は +15.79点でした。
Opus 版は、安全設計を備えた候補を土台として残し、もう一方からは読みやすいレポート表示だけを取り込む、という手堅い采配をしていました。
ただし、ここで立ち止まる必要がありました。
この +15.79 は完成済みの2案を混ぜる工程だけの比較です。
ワーカーを起動し、単体2本を作らせ、障害に対処しながらレーン全体を完遂する「司令塔の仕事」の大部分を測っていません。
数値は正しくても、名札が広すぎる。
そこでフルスクラッチの比較へ進みました。
ステップ2: レーン全体を Opus に任せた
Fable と Codex が走ったのと同じ公開ベースから、Opus 司令塔が新規のワーカーを起動し、単体2本と Mix を作るフルレーンを実行しました。
構成について1つ明記しておきます。
この Opus レーンでも、ワーカーは他のレーンと同じ Fable と Codex のままです。
「Opus 司令塔 × Opus ワーカー」という構成は試していません。
Claude 系のワーカーとしては Fable の方が良いだろう、という仮定(あくまで仮定で、検証はしていません)の下、変えたのは司令塔だけに絞りました。
ワーカーまで替えると、差が司令塔のせいなのかワーカーのせいなのか分からなくなるからです。
道中は平坦ではありませんでした。
- 頼んだ — 事前登録したプロトコルと実行ハーネスの下で、Opus 司令塔がレーンを開始
- 止まった — Windows のサンドボックス設定が成立せず修正。さらに実行中、ワーカー側の provider capacity(供給側の一時的な容量制限)で2回中断
- 戻ってきた — capacity 起因に限定した自動再開の仕組みで復帰し、人間の承認を挟みながら最後まで完走
- 測った — 3レーン×3成果物=9本を凍結し、新しいシードの同一データで一斉採点(Eval4)
ステップ3: 同じワーカー、違う司令塔——数字はこう出た
Eval4 でレーン同士を並べます。
注目は「同じ種類のワーカーが、司令塔によって何点の成果物を出したか」です。
| 成果物の種類 | Fable司令塔レーン | Opus司令塔レーン | 差 |
|---|---|---|---|
| Codex solo | 65.07 | 55.89 | Fable側が9.18高い |
| Mix | 47.84 | 48.15 | Opus側が0.31高い |
| Claude/Fable solo | 44.30 | 42.92 | Fable側が1.38高い |
最も大きな差は Codex solo の 9.18点。
同じ Codex ワーカーでも、Fable 司令塔の下で作られた方が高く出ました。
一方 Mix は Opus 側が 0.31点だけ上——融合工程限定の replay で見えた Opus の采配の良さと方向は合いますが、レーン全体の首位(65.07)には、Opus レーンの最高点(55.89)でも 9.18点届いていません。
この差を「モデルの実力差」と断定はしません。
レーン間でワーカーへの指示の細部や実行環境の経緯は完全には揃っておらず、各1回の観測だからです。
言えるのは、融合工程だけの比較(+15.79)と、レーン全体の比較(9.18差で Fable 側が上)では、結論の向きが変わったという事実です。
部分を測るか、全体を測るかで、司令塔の評価は入れ替わる——これが今回いちばんの発見でした。
現時点の仮説 — 司令塔とワーカーをどう組むか
今回の観測を踏まえた、現時点での私の仮説はこうです。
- 一番良さそうなのは、Fable 司令塔に Codex ワーカーを組み込む構成。 全9成果物の頂点(65.07)は、この組み合わせから出ました。
- Opus 司令塔に乗り換える場合も、軸は Codex ワーカーになりそう。 Opus レーンの最高点も Codex ワーカーの成果物(55.89)でした。Fable 主導ほどの点は出ていませんが、司令塔としてレーンを完走できることは確認できました。
- もしくは、司令塔ごと Codex に寄せる手もある。 Codex 司令塔レーンは Codex ワーカー系の成果物が 58.32(Mix)と 57.07(solo)で、今回は Opus レーンの最高点を上回っています。
いずれも1課題・各1回の観測から立てた仮説であり、結論ではありません。
ただ、どの司令塔の下でも成果の軸になったのは Codex ワーカーだった——この共通項は、乗り換え先を考えるうえで実務的なヒントになりました。
あわせて、融合工程だけの比較(+15.79)とレーン全体の比較では司令塔の評価が入れ替わった以上、「どのモデルが司令塔向きか」より先に「何の工程を測っているか」を確認すべき、という教訓も残っています。
次回・最終回
司令塔を替えても、成果物の頂点は変わりませんでした。
しかし実験自体は、モデルの乗り換えでは解けない問いを残しています。
特定のモデルが使えなくなったら? 次に強いモデルが出たら? 最終回は、この三つ巴の顛末を振り返り、「司令塔もワーカーも差し替えられる体制」という私たちの答え——協調開発エンジン ModelOrcs——につなげて連載を締めます。
この連載(全6回)
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