Notion Agentsの長時間実行——途中確認・停止・引き継ぎをどう設計するか

白地に細い黒線で描かれた、小さな砂時計と、その下の水平線

AI導入 · 2026-10-26 · 11分

Notionは、Agentsが長時間タスクに取り組めるようになったと発表しました。人が常時画面を見ていない作業で、何が実行される前に何を確かめ、どう止め、誰が結果を確認するのか。開始前に決めておくことを考えます。

Notionが公表した内容:Agentsの長時間実行

Notionは、2026年10月19日のリリースノートで、Agentsがタスクに最長24時間取り組めると説明しました。

同日付の公式ブログでは、一つのタスクに24時間を超えて取り組めるようになった、という表現も使われています。

公式資料の間で表現がそろっていないため、本稿では24時間を厳密な仕様上の上限としては扱いません。

また、長く実行できることは、どのタスクも24時間続くことや、無人で安全に完了することを保証するものではありません。

本稿では、この長時間実行を手がかりに、途中確認と停止・引き継ぎの設計を考えます。

まず、Notionの説明として公表されている内容を整理します。

  • 長時間の作業:Agentsが、一つのタスクに長時間取り組めるようになったと説明されています。
  • 専用のコンピュータとブラウザ:エージェントが、専用のコンピュータとブラウザを使えるようになったとされています。
  • 文脈管理の改善:長い作業の中で文脈を扱う仕組みが改善されたと書かれています。
  • 「Review for me」:安全チェックを伴う新しいモードとして紹介されています。
  • クレジットの統合:AI利用が、新しいクレジットの仕組みにまとめられるとされています。

公式資料で確認できる「Review for me」と承認設定

Notionの公式ブログによれば、「Review for me」は、別のモデルが操作の実行前に安全性を確認する仕組みです。

公式ヘルプでは、Notion Agentの承認方法として、「Always ask」「Review for me」「Skip all approvals」の三つが示され、「Review for me」が既定とされています。

ヘルプは、「Review for me」では操作を自動で確認し、安全でない可能性がある操作を検出すると、一時停止して利用者へ確認すると説明しています。

自動レビューが、人なら気づく問題をすべて検出するとは限らない、とも注意されています。

この説明だけで、自社の照合基準や社内承認がすべて確認されるとは判断できません。

業務上必要な確認と、製品が行うチェックを対応づける必要があります。

また、Notion AgentとCustom Agentsでは権限や承認設定が異なるため、利用する種類と構成を確認します。

ヘルプによれば、Notion Agentは利用者と同じ権限で動き、Custom Agentsはエージェントごとの権限と承認設定を持ちます。

本稿では、Notionの使い方、プランごとの違い、クレジットの料金、AI利用費用の上限管理を扱いません。

各機能の詳細と提供状況は、導入を検討する時点の公式資料で確認してください。

長時間の作業で、何を確認するか

確認方法は、実行時間だけでなく、途中で行う操作と誤りの影響に合わせて決めます。

読み取りと下書きだけを行う仕事なら、途中の自動チェックと完了後の確認で進める構成も考えられます。

一方、外部への送信や元データの変更を伴う場合は、実行前に必要な確認を行えるようにします。

そのうえで、製品の安全チェックと自社の確認の関係を整理します。

MIFは、業務上必要な確認を定め、製品の設定を活用しながら、不足する部分を運用や接続先の制御で補うことを勧めます。

たとえば、「Review for me」は、安全でない可能性を検出した操作を保留し、利用者へ確認する仕組みとして活用できます。

一方、「照合結果が自社の基準に合っているか」のような業務上の確認は、製品の安全チェックが判断する対象とは限りません。

こうした確認は、処理の分割、承認設定、接続先の権限、社内の手順で実現します。

開始前に決める三つ:確認の条件・停止方法・結果の確認担当者

長時間にわたる作業を任せる前に、次の三つを決めておくことを提案します。

  • 確認の条件:何が実行される前に、何を確かめ、どの条件なら続行し、どの条件なら保留するか。
  • 停止方法:どんな条件で、誰が、何を止めるか。止めた後の状態をどう確認するか。
  • 結果の確認担当者:誰が結果を確認し、業務上の完了を判断するか。

通し事例(仮の例):月末の請求書と支払記録の照合

月末に、仕入先から受け取った請求書と社内の支払記録を照合し、差異や照合できなかった項目を一覧にする仕事を、夜間にエージェントへ任せるとします。

エージェントには、元の請求・支払記録を変更する権限や、取引先への送信・支払いの権限を与えません。

結果の確認後に必要となる連絡や支払いは、既存の社内手順で人が行います。

夜間には応答できる担当者を置かず、人の判断が必要な状態になったら処理を保留し、翌朝に確認する運用とします。

以下はMIFによる仮想的な運用例であり、Notionでの実装を検証したものではありません。

時点確認する資料・状態確認・制御の例
開始前対象期間、照合対象、照合基準、保存先、完了条件担当者が条件と権限を確認する。元データの変更や支払いは対象外にする
一部データでの試行一部の照合結果と参照元担当者が読み取り方と照合基準を確認し、本処理へ進めるかを判断する
夜間の本処理中処理件数、取得失敗、照合できない項目、対象範囲からの逸脱事前に決めた条件で記録・保留・通知する。人の判断が必要な状態では保留し、担当者が続行を認めるまで進めない
翌朝の結果確認処理状況、結果一覧、未処理・保留項目、参照元、処理記録担当者が完了・保留の状態を確認し、完了条件を満たすか、再開や追加確認が必要かを判断する。必要な連絡や支払いは既存の社内手順へ引き継ぐ

どこで確認し、どの水準で保留するかは、自社の業務、扱うデータ、想定される影響と許容できるリスクに合わせて調整してください。

確認の条件を、実際に保留される仕組みにする

誰が何を確認するかを業務上の条件として定め、それを製品の承認設定、処理の分割、接続先の権限などで実現します。

上の例なら、一部データでの試行と本処理を別のタスクに分けることで、担当者の確認を挟めます。

元データの変更や支払いを認めない場合は、接続先の権限などで対象の操作を制限し、実際に実行できないことを確認します。

確認するタイミングを決めるだけでなく、必要な確認や承認が済むまで処理が進まないことを、実際の動作で確かめます。

確認を置く位置は、作業の区切りと、影響の大きい操作の前を候補とします。

必要に応じて、経過時間や処理件数による制限も組み合わせます。

最初の区切りで読み取り方の誤りを見つけられれば、その後の作業がまとめて無駄になる事態を避けやすくなります。

人による確認も、方法と結果を確かめる

人とAIを組み合わせれば、必ず成績がよくなるとは限りません。

Vaccaro、Almaatouq、Maloneのメタ分析(Nature Human Behaviour、2024年)によれば、分析対象全体の平均では、人とAIの組み合わせは人間単独を上回りましたが、人間単独とAI単独のうち成績がよかった方には及びませんでした。

ただし、この研究は、長時間エージェントの確認回数や配置を評価したものではありません。

本稿では、人による確認の方法と効果を検証する必要性を考える参考にします。

ここからは、私たちの設計上の提案です。

確認する人が、何を見て判断すればよいか分からないまま確認点だけを置くと、確認は形だけになりかねません。

そこで、確認点の数を先に減らすのではなく、各確認の目的、必要な資料、続行・保留の条件を決めます。

  • 目的を決める:その確認で何を防ぐのかを明確にする。
  • 資料をそろえる:要約、差分、保留事項を一覧にし、元資料や処理記録へ辿れるようにする。
  • 判断基準を具体化する:「これでよいか」ではなく、「この条件を満たしているか」を確認する。

重複した確認は整理し、業務上必要な承認は残します。

自動処理と人による確認の分担は、運用実績を踏まえて見直します。

そのために、確認の場面で何が起き、どう判断したかの記録を残しておきます。

停止・再開の方法と、担当体制を決める

停止:何が止まるかを、操作ごとに確かめる

停止方法は、利用するエージェントの種類ごとに、実行中の処理、次回以降の起動、接続先へのアクセスのどこまで止められるかを確認します。

Custom Agentsについては、公式ヘルプに、管理画面からトリガーを無効にして自動実行を止めることや、エージェントのアクセス権を変更・削除することが説明されています。

一方、ヘルプは、承認設定を変更しても、エージェントがすでに行ったことは元に戻らないとも説明しています。

本稿で確認した公式資料の範囲では、実行中のタスクを途中で止める操作や、止めた後の状態についての詳しい説明は見当たりませんでした。

導入を検討する場合は、最新の公式資料と実際の画面で確かめてください。

権限の取り消しや接続の解除を停止手段として使う場合は、その操作で止められる範囲を確認します。

実行済みの変更、外部システムへ依頼済みの処理、今後の予約実行は、それぞれ分けて確認します。

再開:続けるか、やり直すかを判断する

途中までの成果物が残っていても、再開に必要な状態が保存されているとは限りません。

最後に確認した結果にも誤りが含まれていた場合は、そこから再開する前に、誤りが生じた範囲を見直します。

再開時には、最後に確認できた結果、完了済みの処理、未処理の範囲、入力データや権限の変更を確認します。

そのうえで、途中から続けるか、対象範囲をやり直すかを決めます。

システムが途中再開に対応している場合も、同じ処理を重複して実行しないことを確認します。

担当体制:対応する人と不在時の代理を決める

結果を確認する担当者が決まっていないと、長時間の作業の結果が、確認されないまま残ります。

結果を確認する役割と現在の担当者、不在時の代理を明確にします。

途中で異常が起きた場合の対応担当者と、完了後の結果を確認する担当者が異なる場合は、それぞれを記録します。

上の例のように、夜間に応答できる担当者を置かない運用もあり得ます。

その場合は、人の判断が必要になったら保留し、確認できる時間まで待つ、という条件を示しておきます。

小さな会社では、依頼者、承認者、結果の確認担当者を同じ人が兼ねることもあるでしょう。

兼務でも、どの立場で何を確認したかを書き分けておくと、後から見直しやすくなります。

想定される反論:「長く任せられることが価値。確認を入れると意味が薄れる」

人が常時画面を見ていなくても進められることが価値だ、という意見はもっともです。

確認を増やしすぎれば、その価値は薄れます。

私たちも、AIにできることはAIに任せ、人はAIと協働して仕事の質を高める、という考え方をとっています。

必要な確認が実際に行われることを確かめ、重複した確認や不要な待ち時間を減らすことを勧めます。

必要な場面で保留・通知できることを確認しておくと、常時画面を見続ける運用を減らせます。

まとめ

MIFは、長時間の作業をエージェントへ任せる際、実行時間だけでなく、扱う情報、許可する操作、誤りが生じた場合の影響に応じて、確認方法を決めることを重視しています。

開始前に、完了条件、続行・保留の条件、停止方法、結果を確認する担当者を定めます。

製品の安全チェックや承認機能を活用しながら、必要な場面で実際に処理が保留されることを確かめます。

停止後は、完了済みの処理と残っている処理を確認し、再開・やり直し・担当者への引き継ぎを判断します。

目的は、確認を増やすことでも、減らすことでもありません。

人が常時画面を見ていなくても、必要な確認が抜けず、問題が起きたときに対応できる運用を整えることです。

まず一つの仕事を選び、表の各項目を、自社の条件や担当者に置き換えて整理してみてください。

決まっていない条件や担当者があれば、利用前に整理します。

情報確認について

本記事は2026年10月26日確認時点で、Notion公式サイトのリリースノート(2026年10月19日付)、同日付のNotion公式ブログ、Notionヘルプセンターの「Choose how Notion Agent asks for your approval」「Get started with Notion Agent」「Custom Agents sharing & permissions」を主な参照元として作成しています。

長時間の作業、専用のコンピュータとブラウザ、「Review for me」、承認設定、権限に関する記述はNotionの説明に基づくものであり、MIF LLCが独立して動作や効果を検証したものではありません。

提供時期、対象プラン、機能の詳細は変更される可能性があります。

ご利用の前に、Notionの最新の公式資料と契約条件をご確認ください。

研究については、Vaccaro, Almaatouq, Malone「When combinations of humans and AI are useful: A systematic review and meta-analysis」Nature Human Behaviour, 2024を参照しています。

確認の条件の整理、表の内容、請求書と支払記録の照合の例は、私たちによる分析と提案、および説明のための仮の例です。

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